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経営情報学会関西支部 平成17年度講演会
 第3回講演概要
 
ご講演者
有馬 昌宏氏

兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科

日時
2005121213時30分〜13時50分
タイトル
EAの実情と課題について
内容

 企業とはインプットに技術的変換を加えアウトプットを生み出す存在であり、その企業が抱える問題とは、現実と目的理想の間に存在するギャップであることを踏まえ、企業の将来像とそれを達成するための道筋である戦略立案が必要であること、部分最適化等の問題を解決し、ToBeの実現のために戦略に適合した情報システムが重要である。


ご講演者
宗平 順己氏

株式会社オージス総研 技術部ソフトウエア工学センター長

日時
20051212 日13時50分〜14時50分
タイトル
『EA取り組みの実態』
内容

 1.EAの定義

経営資源を構造化して経営戦略の実行体を作り出すための「企業構造設計図による業務とシステムの最適化計画」のこと

2.EAの背景

 ビジネスのスピード・変化への対応するITへのニーズ
 分散化、部分最適の行き詰まり
 
非システム部門とシステム開発部門との考え方・理解のギャップ

3.EAの構造について

EAは、

・政策・業務体系(業務活動を可視化したBusiness Architecture)
・データ体系(利用する情報を可視化したData Architecture)
・適用処理体系(情報システムの構造を可視化したApplications Architecture)
・技術体系(技術的構成要素を可視化したTechnology Architecture)

の4つからなり、現在の姿(Asis)を明らかにし、理想モデル(ToBe)を描き、次いでその移行計画として次期モデルを作成するといった順に検討する。

4.EAによる効果

 重複投資の回避、コスト削減といったIT投資の合理化や戦略的投資効果の向上
 ITガバナンスの向上
 システムの統合、相互運用性の推進による変化に強い企業

5.EAのアプローチ方法

 可視化アプローチ、基盤整備アプローチ、業務改革アプローチの3パターンに分類可。
 基盤整備アプローチは主に既存のシステムの維持・全体最適化が目的であり、業務改革アプローチは新規に情報システムを導入するような場合に選択される。情報部門の成熟度によって、いずれのアプローチをとるかが決まる。

8.トヨタにおけるEA

 グローバルシステムの構築として、システムのカテゴリー化を実施。システムの標準化。

9.サントリーにおけるEA

 エンドユーザーによって作られたアプリケーション過多が問題になっていた。そこで、アプリケーション数を減らし、コンポーネント型開発を行うことにより、開発のスピードアップ、コストダウンなどを実現した。

ご講演者
秋山 雅俊氏

シスメックス株式会社経営企画本部情報ソリューション部長

日時
20051212 日15時00分〜15時30分
タイトル
『ERPを導入して』
内容

 ERP(Enterprise Resource Planning)とは企業の経営資源を個々の業務レベルではなく、企業全体において有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のことである。本講演では実際にERPを導入した経験を持つユーザー企業の立場から見るERP ・EA ・SOAについてご講演いただいた。
講演の概要はまずシスメックスのERP導入の歴史について触れ、次にその導入後の経過、そして最後にまとめとして、EAの効果とERPについてというものであった。以下各項目の詳細について述べられた。そのポイントは次のようなものであるとのことであった。
 まずERP導入の歴史についてお話いただいた。シスメックスでは90年代半ば、医療機器の競争激化、Y2Kといった外部環境、加えて上場によるシステム強化の必要性、取引形態の多様化などの内部環境、さらには情報システム環境といった様々な要因により、企業体質を改善する必要性に迫られていた。すなわち低コスト高スピード経営への転換である。
 以上のような背景により、シスメックスはSAP社の『R/3』を用いたERPによる会社基幹系情報の一元化を選択した。シスメックスにおけるERP導入は大きく分けると96〜00年の初期導入フェイズ、01年から行われている関係会社展開フェイズに分ける事ができる。
 前者の初期導入フェイズでは導入対象はシスメックス株式会社であり、導入効果としては柔軟性、信頼性の増加及びY2Kへの対応といったものが挙げられる。しかしERPを導入するだけでも大きな負担だったせいもあってか、徹底した業務革新が出来なかった、全般的に情報基盤の置き換えに留まったといった反省点もあった。
 以上の様な経験を踏まえ、後者の関係会社展開フェイズでは既に導入経験を持つシスメックス側が関連会社へのR/3の導入を全面的にバックアップ。その結果、決算の短縮、業務コストの削減、関連企業とのシェアード体制、統合業務の早期確立といった効果を得ることが出来た。
 次にその後の導入経過ということで、現在のシステム構成についてご説明いただいた。シスメックスのシステム構成は先ほど述べた様にR/3を主体にしている。しかし、R/3で全てをカバーできるわけではない。したがってシスメックスではR/3でカバーできない人事情報や試薬関係のシステムなどの部分は別会社のシステムを用いる事でカバーしている。
 
以上の様な現状から、将来的にはR/3自体はシステムのバックボーンとしては存在するが、ユーザーの側から見えなくなるだろうと予測される。そしてそのような状態がSOA(Service Oriented Architecture)の一つの理想的な姿と言えるのではないのだろうかと考えられる。

最後にEA(Enterprise Architecture)とERPの関係性についてご説明いただいた。EAは一般的にBA(Business Architecture),DA(Data Architecture),AA(Application Architecture),TA(Technology Architecture)からなる4層モデルで表現される。

ERPはその内のDAからTAの部分をカバーする。しかし、ERP内部はEAに表現する事は出来ないし、また表現する必要も無い。それではEAの効果とは一体何なのか。

それは企業の経営戦略とIT戦略とを橋渡しする為の可視化も出るとしては非常に有用であるということだ。EAは経営者とIT部門との意思疎通を容易にし、事業とIT投資の目的とを繋げる事が可能にする効果があるのではないかと考える事ができるだろう。しかし、最初から詳細で大掛かりなものを作る事は困難であると考えられる。

 以上までをまとめると、ERPだけで企業の全ての情報システムをカバーできるわけではない。しかしERPは企業の情報システムの基幹としては非常に有用なものである。したがってカバーしきれない部分についてはERPをバックボーンとして別のシステムで補う必要性がある。この手法でシステム設計を行っていく事で、理想的なSOAを達成できる可能性は大きい。

 また、EAは経営者とIT戦略との意思疎通の為のアーキテクチャとして非常に有用なものである。したがって、EAを用いる事で、経営戦略とIT戦略とを一致させる事が容易になるのではないかと考えられる。

関連リンク

・株式会社シスメックス:http://www.sysmex.co.jp/

・用語関連(IT用語辞典e-Words)

EA   :http://e-words.jp/w/EA.html

SOA   :http://e-words.jp/w/SOA.html

ERP   :http://e-words.jp/w/ERP.html

SAP R/3 :http://e-words.jp/w/SAP20R2F3.html


ご講演者
早津 俊英氏

日本BEAシステムズ株式会社プロフェッショナルサービス本部
プリンシパルコンサルタント  

日時
20051212 日15時30分〜16時30分
タイトル
SOA概説〜そしてEAとの関連〜』
内容
近年大きく注目を集めているSOA(Service Oriented Architecture)について、実際にSOAソリューションを提供している日本BEAシステムズ株式会社プロフェッショナルサービス本部プリンシパルコンサルタントの早津 俊英氏にご講演いただいた。

 講演の概要としては、まず先ほども述べたようにSOAソリューションを提供している日本BEAシステムズ(以下BEA)のご紹介をしていただき、次にSOAの概説についてご説明いただいた。そして実際のSOAの適用事例に触れた後、最後にSOAとEAとの関連性についてお話いただいた。以下各項目の詳細について述べられた。以下そのポイントについて示す。

まずSOAソリューションを提供しているBEAについてお話いただいた。BEAは今や企業戦略に欠かせないIT基盤を提供するソフトウェア ・インフラストラクチャ企業である。その活動の中のひとつとして、SOAソリューションにも大きく力を入れている。そして近年SOAに対する注目が高まっているのに従ってBEAへの注目も大きく高まっているようだ。そのBEAの提供するSOAソリューションは、SOAに対する構造的なアプローチ、SOAを実現する総合プラットフォーム、プロセス支援のためのソリューションフレームワーク、戦略的サービスによる支援といったトータルなSOA戦略であるとのことだった。
 次にSOAの概説についてお話いただいた。SOAは企業などによってその定義が曖昧であり、理解しがたいものである。ご講演の中ではBEAの定義するSOAについてお話いただいた。その定義とは、『SOAとは企業アプリケーションにおけるここの機能を相互運用性、標準規格ベースでの接続、再利用によるビジネスニーズへの即応性に向けて構成するためのIT戦略である』ということであった。
 しかしSOAを理解するうえで一番抑えておきたいのは『疎結合』というキーワードである。そもそもSOAでシステムを構築する目的は、柔軟性・迅速性の高いシステムを作りたいというニーズから発生している。それではこの様なシステムを作るためにはシステムの影響範囲がわかりやすく小さいことが重要であり、そのためには依存関係が低く独立性の高いシステム構造であることが必要である。すなわち疎結合アーキテクチャ、つまり各々の?がりの緩い構造である必要性があるということだ。
 したがって以上のようなシステムを作る際にSOAという考え方が必要になる、という風にお話いただいた。

 そして実際のSOA適用事例ということで、製造業及びテレコム事業におけるSOA適用事例についてお話いただいた。前者の事例では既に社内で作成されたEAを基にして、一体どの様にシステムを作成するのかという所でSOAの考え方を活用した、というものであった。
 後者の事例では、既存のシステムがSOAとはまったく逆の状態、すなわち疎結合ではなく、密結合なシステムである為に柔軟性に欠けたシステムになっていた。そこでSOAの考え方を適用し、密なシステムを疎なシステムへと変えていったというものであった。

 以上二つの事例の様に、新しくシステムを構築する際及び、既存のシステムを再構築する際にもSOAが有効活用できるだろうということをお話いただいた。

 最後にとEAとの関連性について次の様にご説明いただいた。EAは経営目標を達成する為のITの手段であり、SOAはその実現方法である。そしてSOAを実行する為にEA的な思想をベースにする事は重要な事である。そして、EA,SOA共に構想は大きいが小さいところから始めていくことは可能である、ということであった。

また、EA,SOA共にハード面並びにソフト面の両方においてシステムのアーキテクチャを把握し計画し維持する事が非常に重要であるという事をご説明いただいた。

関連リンク

・日本BEAシステムズ株式会社:http://jp.bea.com/

・関連用語(IT用語辞典e-Words,@IT)

SOA   :http://e-words.jp/w/SOA.html

    : http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/soa.html

備考
参加人数10名
LastUpDate : 2005/01/08